「事務しかやってこなかったから、転職先も事務しかない」
以前の私は、本気でそう思っていました。
短大を卒業してから、観光施設、広告代理店、ヘルスケア系施設、そしてインフラ系の会社と、いくつかの職場を経験してきました。
でも、振り返ってみると、やってきた仕事の中心はずっと「事務」でした。
そのため、転職を考えたときも、
「私は事務しかできない」
「特別な資格もない」
「大学も出ていない」
「技術職もできない」
「営業もできない」
そんなふうに、自分の可能性をかなり狭く考えていました。
ところが、キャリアについて勉強したり、これまでの仕事を改めて振り返ったりするうちに、少し考え方が変わってきました。
「事務しかできない」のではなく、「事務経験の中に、別の仕事でも使える経験があるのでは?」
と思うようになったのです。
この記事では、私自身の経験も交えながら、一般事務から考えられる仕事や、「事務経験」を別の職種につなげて考える方法についてまとめてみます。
まず知っておきたい。「事務経験」は意外と幅が広い
「一般事務」と聞くと、
- パソコン入力
- 書類作成
- 電話対応
- コピー
- ファイリング
などをイメージするかもしれません。
もちろん、こうした仕事も事務の大切な仕事です。
でも、実際に事務として働いてみると、それだけではありません。
私が最後に勤めていた職場では、例えばこんな仕事をしていました。
勤怠管理、時間外勤務の管理、年末調整、福利厚生、健康診断、産休・育休や病欠に関する書類作成、請求書処理、小口現金管理、出納帳、資金送金依頼、固定資産管理、被服貸与管理、防災備蓄管理、消耗品の注文、名簿作成、本社への報告、社員の各種申請対応など。
さらに、社員の異動があれば、社宅申請や交通費・手当の申請を手伝ったり、事業所で必要なものを手配したり。
健康診断なら約40人分の予約をまとめる。
インフルエンザ予防接種の対応をする。
社内行事があれば、会場、保険、弁当、備品、バスなどを手配する。
社内行事があれば業者との打ち合わせをする。
36協定を作成して労働基準監督署へ提出する。
社員から頼まれれば調べものをする。
上司がシステムを苦手としていれば、そのフォローもする。
今こうして書き出してみると、
「これって本当に全部、一般事務の仕事だったの?」
と思うくらい、いろいろなことをしていました。
「事務」という職種名だけでは、経験の中身が伝わらない
ここが、私が一番伝えたいところです。
転職活動では、
「一般事務を○年経験しました」
だけで自分のキャリアを説明してしまいがちです。
でも、それでは自分が何をしてきたのか、十分に伝わりません。
例えば、
「勤怠管理をしていた」
という経験は、
→ 労務の仕事につながるかもしれません。
「福利厚生の手続きをしていた」
なら、
→ 人事・総務につながるかもしれません。
「請求書や小口現金を扱っていた」
なら、
→ 経理の仕事につながるかもしれません。
「社員からの相談や申請に対応していた」
なら、
→ 社員支援やカスタマーサポートなどにもつながるかもしれません。
つまり、
「何という職種だったか」よりも、「実際に何をしてきたか」
を見直すことが大切なのだと思います。
一般事務から考えられる転職先
ここからは、一般事務の経験から考えられる仕事を、私自身が「こんな仕事につながるかもしれない」と感じたものを中心に紹介します。
① 総務
総務は、会社の中のさまざまなことを支える仕事です。
備品管理、社内行事、施設管理、契約、福利厚生、安全衛生、防災など、会社によって仕事内容はかなり幅広くなります。
私が経験してきた、
- 備品購入
- 消耗品管理
- 防災備蓄管理
- AED管理
- 健康診断
- 社内行事
- 福利厚生
- 被服貸与管理
- 名簿作成
なども、総務の仕事と重なる部分があります。
「人の前に立つより、裏側から会社を支えるほうが好き」
「頼まれたことを整理して対応するのが得意」
「いろいろな仕事をするほうが飽きない」
という人には、総務という選択肢があります。
② 人事・労務
人事・労務も、事務経験とつながりやすい仕事の一つです。
勤怠管理、給与計算、年末調整、入退社手続き、社会保険関連、福利厚生、採用、研修など、仕事内容は多岐にわたります。
私自身も、最後の職場で勤怠管理、年末調整、福利厚生、健康診断、産休・育休などの書類対応を経験しました。
当時は、
「これも事務の仕事」
と思ってやっていました。
でも今振り返ると、これらは人事・労務という専門分野につながる経験だったのだと分かります。
私は現在、キャリアコンサルタントの勉強をしています。
その中で、人事や社員支援という仕事にも改めて興味を持つようになりました。
「事務経験を活かしながら、もう少し人と関わる仕事がしたい」
という人にとって、人事・労務は検討しやすい選択肢かもしれません。
③ 採用アシスタント・採用事務
「人事には興味があるけれど、採用経験がない」
という人もいると思います。
そんな場合は、採用アシスタントや採用事務という仕事から考えてみる方法もあります。
求人票の作成、応募者との連絡、面接の日程調整、書類管理、入社準備など、事務処理能力を活かせる仕事もあります。
そして採用では、人と関わる機会も増えます。
「パソコンに向かう仕事だけでは少し物足りない」
「でも営業のような仕事はしたくない」
という人にとっては、興味深い選択肢になるかもしれません。
④ 営業事務・営業アシスタント
営業そのものをするのではなく、営業担当者をサポートする仕事です。
見積書、請求書、資料作成、顧客対応、スケジュール調整など、事務経験を活かせる仕事が多くあります。
「人と関わりたいけれど、自分が営業をするのはちょっと……」
という人なら、営業事務という働き方もあります。
私自身も、広告代理店にいたときには営業職の男性をサポートする立場でした。
ただし、同じ「営業事務」でも会社によって仕事内容や忙しさ、人間関係は大きく違います。
職種名だけで判断せず、求人票や面接で仕事内容を確認することも大切です。
⑤ 経理アシスタント
請求書、伝票、入出金、小口現金などを扱ってきた人なら、経理アシスタントも候補になります。
私も、
- 請求書処理
- 小口現金管理
- 出納帳
- 通帳記帳
- 資金送金依頼
- 光熱費の支払い
- 研修費の振込
などを経験しました。
「経理の資格を持っていないから無理」
と思う人もいるかもしれません。
でも、「経理そのもの」だけでなく、経理補助や経理アシスタントなど、これまでの経験を土台にして考えられる仕事もあります。
⑥ 医療・福祉系の事務
私は今、キャリアについて学ぶ中で、福祉や相談支援などにも興味を持つようになりました。
でも、私は看護師や介護士のように、直接人の身体を支える仕事ができるわけではありません。
だからといって、
「福祉に興味があるけれど、自分には関係ない」
と決めつける必要はないのかもしれません。
医療事務、介護事務、福祉施設の事務など、事務経験を活かしながら人を支える仕事もあります。
「人の役に立ちたい。でも直接介護や看護をする仕事は難しい」
という人にとって、こうした仕事も一つの選択肢になります。
⑦ 学校・教育関連の事務
学校事務や教育関連企業、スクール運営などにも事務の仕事があります。
書類管理、受講生対応、講座の運営、スケジュール調整など、事務処理と人との関わりの両方がある仕事もあります。
「学ぶことが好き」
「人の成長をサポートすることに興味がある」
という人なら、こうした分野も視野に入れてみてもいいかもしれません。
⑧ カスタマーサポート・問い合わせ対応
電話やメールなどで、お客様の困りごとを聞き、必要な対応をする仕事です。
事務経験で身につけた、
- 正確な情報処理
- 調べもの
- 電話対応
- 書類作成
- 社内への確認
- 相手に合わせた対応
などが活かせる場合があります。
私は昔から、人と話すこと自体は好きでした。
だからこそ、最後の職場で「誰とも話さない」「職場でコミュニケーションがほとんどない」という環境が、とてもつらかったのだと思います。
「事務は嫌いなのではなく、人と関わらない事務がつらかった」
という人もいるのではないでしょうか。
「未経験だから無理」と決めつけなくてもいい
ここまで読んで、
「でも、私はそんな経験ないし……」
と思った人もいるかもしれません。
私も以前はそうでした。
でも、仕事内容を別の角度から見てみると、意外なつながりが見えてきます。
例えば、
勤怠管理をしていた
→ 労務
福利厚生の手続きをしていた
→ 人事・総務
請求書や小口現金を扱っていた
→ 経理
社員からの問い合わせに対応していた
→ 社員支援・カスタマーサポート
社内行事を企画・準備していた
→ イベント運営・調整
本社に報告していた
→ 社内調整・報告業務
このように、
「事務」という大きな箱の中から、自分が実際に経験した仕事を一つずつ取り出してみる。
そうすると、「事務しかできない」という見え方が少し変わってくるかもしれません。
ただし、「経験を活かせる仕事」と「自分に合う仕事」は別
ここは、私自身が何度も転職を経験して感じたことです。
「今までの経験を活かせるから」という理由だけで、次の仕事を決めればいいわけではありません。
私はこれまで、
神社では、たくさんの人に囲まれて働くことが楽しかった。
広告代理店では、一人で事務所にいることがつらかった。
温浴施設では、パートさんとの関わりは楽しかったけれど、労働環境が過酷だった。
インフラ系の会社では、給与や福利厚生はとても恵まれていたけれど、職場の雰囲気が自分には合わなかった。
こうして振り返ると、
「何の仕事をするか」だけではなく、「どんな環境で働くか」が、自分にとってとても重要だった
ことが分かります。
だから転職するときには、
- 給料
- 休日
- 福利厚生
- 勤務時間
- 通勤時間
だけではなく、
「人とどのくらい関わりたい?」
「一人で働く時間とチームで働く時間、どちらが好き?」
「忙しいほうがいい?それとも余裕があるほうがいい?」
「誰かをサポートすることが好き?」
「自分で判断できる仕事がしたい?」
「職場で雑談できる雰囲気が好き?」
なども考えてみるといいと思います。
いきなり全く違う仕事に飛び込まなくてもいい
「キャリアを変える」というと、今までの仕事を全部捨てて、全く違う仕事に挑戦するイメージがあるかもしれません。
でも、そんな必要はありません。
例えば、
一般事務
↓
総務
↓
人事・労務
↓
採用
というように、今までの経験に近いところから少しずつ方向を変えていくこともできます。
一般事務
↓
営業事務
↓
営業アシスタント
↓
カスタマーサポート
という道もあります。
事務
↓
福祉施設の事務
↓
相談支援に関わる仕事
という可能性もあるかもしれません。
もちろん、実際にどの仕事へ転職できるかは、年齢、経験、資格、求人状況などによって変わります。
それでも、
「未経験職種に行く=今までのキャリアを全部捨てる」
と考える必要はないのだと思います。
転職先を探す前に、自分の「事務経験」を3つに分けてみる
ここで、もし今「事務しかできない」と悩んでいるなら、一度紙やスマートフォンに書き出してみてください。
① 事務の仕事で「できるようになったこと」
例えば、
- 正確なデータ入力
- 書類作成
- お金の管理
- 請求書処理
- 勤怠管理
- 電話対応
- 調べもの
- スケジュール調整
- 人への連絡
- 本社への報告
など。
「こんなこと、誰でもできる」と思わずに書いてみてください。
② 事務の仕事で「苦痛だったこと」
こちらも、とても大切です。
例えば、
- 一人で黙々と仕事をする
- 人とほとんど話さない
- 電話が多すぎる
- 急な頼まれごとが多い
- 責任ばかり増える
- 感謝されない
- 職場の雰囲気が合わない
- 仕事とプライベートの境界がない
など。
「何が嫌だったのか」を知ることは、次の職場選びで同じことを繰り返さないために役立ちます。
③ 「本当は、もう少しやってみたいこと」
最後に、
- 人と話したい
- 人をサポートしたい
- 採用に関わりたい
- 人材育成に興味がある
- キャリア相談に興味がある
- 教育に関わりたい
- 福祉に関わりたい
- 自分で考えて動く仕事がしたい
- 副業をしてみたい
など、「少し気になる」程度でもいいので書いてみます。
この3つを並べてみると、
「自分は何ができるのか」
「何が嫌なのか」
「何に興味があるのか」
が、少しずつ見えてくるかもしれません。
まとめ|「事務しかできない」ではなく、「事務経験をどう使うか」
私は長い間、「事務しかできない」と思っていました。
でも、仕事を一つずつ振り返ってみると、実際にはたくさんの経験をしていました。
総務につながる経験。
人事・労務につながる経験。
経理につながる経験。
人をサポートする経験。
調整する経験。
トラブルに対応する経験。
分からないことを調べて解決する経験。
そして、たくさんの人の仕事が円滑に進むように、裏側から支える経験。
これらは、私が「一般事務」という仕事をしてきた中で身につけてきたものです。
だから今は、
「私は事務しかできない」
ではなく、
「私はこれまでの事務経験を、これからどう使っていけるだろう?」
と考えるようになりました。
もちろん、私自身もまだ答えを探している途中です。
事務職に戻る可能性もあります。
人事や採用、社員支援などに挑戦する可能性もあります。
キャリアコンサルタントの勉強も続けています。
ブログや副業についても、少しずつ勉強しています。
まだ「これが私の天職です」と言える仕事は見つかっていません。
でも、それでもいいのだと思っています。
キャリアは、一度決めたら終わりではありません。
今までの経験を振り返って、少し方向を変えてみる。
興味のあることを勉強してみる。
求人を眺めてみる。
やってみたいことを小さく始めてみる。
そうやって、自分に合う道を探していけばいい。
もしあなたも、
「事務しかできない」
と思っているなら、まずは一度、自分の経験を全部書き出してみてください。
もしかすると、あなた自身が気づいていない「できること」が、まだたくさん眠っているかもしれません。
