「私、事務しかしてこなかったんです」
転職について話すとき、私は以前、この言葉をよく使っていました。
事務職。
経費精算。
請求書処理。
勤怠管理。
年末調整。
書類作成。
備品管理。
社員の申請対応。
どれも、特別な資格がなくてもできる仕事。
そう思っていました。
だから、
「私には転職できるようなスキルがない」
と思っていたのです。
でも、キャリアについて勉強し、自分のこれまでを振り返るようになってから、
少しずつ考え方が変わってきました。
私が「ただの事務」と思っていたことも、誰かにとっては十分に仕事のスキルだったのかもしれない。
そう思うようになったのです。
「事務しかしてこなかった」が、ずっとコンプレックスだった
私はこれまで、いくつかの仕事を経験しています。
会計補助。
請求書発行。
店舗運営。
トラブル対応。
そして、一般事務。
その中でも、比較的長く経験したのが事務の仕事でした。
だから転職を考えたとき、
「事務以外に何ができるんだろう?」
と考えてしまいました。
営業経験があるわけではない。
専門職でもない。
ITが得意なわけでもない。
特別な資格がたくさんあるわけでもない。
「これといった武器がない」
と思っていました。
求人サイトを見ても、
「私にできそうな仕事って、また事務しかないのかな」
と思う。
でも、
「また事務だけでいいのかな」
とも思う。
この繰り返しでした。
でも、実際にやっていたことを書き出してみた
キャリアについて考えるようになって、
自分が今まで何をしてきたのか、一つずつ書き出してみました。
すると、
思っていたよりたくさんありました。
経費精算。
小口現金管理。
請求書処理。
書類作成。
備品管理。
勤怠管理。
年末調整。
福利厚生関係。
健康診断。
社員の各種申請対応。
本社への報告。
社員からの問い合わせ対応。
そして、
月に約50件の請求書処理。
2拠点、計40名ほどの社員を対象とした管理業務。
こうして並べてみると、
「何もしていなかった」わけではありません。
むしろ、
毎日かなりいろいろなことをしていました。
「できて当たり前」が、一番見えにくい
事務の仕事をしていると、
仕事が正確にできる。
期限を守る。
書類を間違えない。
必要なものを準備する。
誰かから頼まれたことを忘れない。
問い合わせに対応する。
周囲の状況を見て動く。
こういうことが、
「できて当たり前」
になってしまいます。
だから、
「これってスキルなの?」
と思ってしまう。
でも、考えてみれば、
会社の中で誰かがやらなければ仕事は回りません。
請求書の処理が遅れれば、支払いにも影響します。
勤怠が間違っていれば、給与にも関わります。
年末調整を間違えれば、社員にも迷惑をかけます。
申請書類がきちんと処理されなければ、その人が困ります。
つまり、
「当たり前に仕事を回す」ということ自体が、事務職の大切な役割だったのです。
正確さは、立派なスキルだった
私は、事務職として働く中で、
「正確に処理する」
ことをかなり大切にしてきました。
特にお金に関する仕事は、
「たぶん合っている」
では困ります。
数字を確認する。
書類を確認する。
期限を確認する。
不明点があれば確認する。
必要なものが揃っているか確認する。
こういう小さな確認を積み重ねる。
今まで私は、
「そんなの事務員なら普通」
と思っていました。
でも、
「普通にできる」ということは、実は強みです。
自分が簡単にできることほど、
自分では価値に気づきにくい。
これも、キャリアについて考えるようになって気づいたことの一つです。
「人を支える」ことも、私の仕事だった
私は以前、
「人と関わる仕事がしたい」
と思いながらも、
「でも、事務しかしてこなかった」
と考えていました。
でも、今までの仕事を振り返ると、
完全に人と関わらずに働いていたわけではありません。
社員から、
「この申請ってどうしたらいいですか?」
と聞かれる。
年末調整について相談される。
健康診断について確認される。
勤怠について問い合わせを受ける。
困っている人の話を聞く。
必要なところに確認する。
その人が困らないように処理する。
これって、
「人を支える仕事」でもあったんじゃないか。
今ではそう思います。
もちろん、キャリアコンサルタントの仕事とは違います。
でも、
「相手が困っていることを把握して、必要なサポートをする」
という部分では、つながっているところがあります。
「気が利くね」と言われてきたこと
私はこれまで、
「〇〇さんは気が利くね」
「頼られているね」
「仕事が早いね」
「仕事ができるね」
と言ってもらったことがあります。
以前は、
「たまたまかな」
くらいに思っていました。
でも、今振り返ると、
そこにも自分の特徴があったのだと思います。
頼まれてから動くのではなく、
「これが必要になりそうだな」
と考える。
誰かが困っていたら、
「大丈夫かな」
と気づく。
自分の仕事だけを見るのではなく、
周囲の状況も少し見る。
そういうところを評価してもらっていたのかもしれません。
「仕事が早い」は、単に急いでいたわけではない
仕事が早いと言われることもありました。
でも、ただ急いでいたわけではありません。
優先順位をつける。
先に終わらせたほうがいいものを判断する。
あとで困らないように準備する。
同じ作業を何度もやらなくていいように考える。
そういう積み重ねです。
つまり、
段取りを考える力
も、私の中にあったのだと思います。
これも、当時の私は「事務なら普通」と思っていました。
そして、私は一度「正社員」にも登用された
前職では、最初は派遣社員でした。
育児休業者の代替要員として、一般事務を担当しました。
経費精算。
小口現金。
請求書。
書類作成。
備品管理。
社員の申請補助。
さまざまな仕事を任せてもらいました。
そして約1年後、
仕事への取り組みや責任感を評価してもらい、正社員に登用されました。
当時は、
「頑張ってきたからかな」
くらいに思っていました。
でも今なら、
「自分が積み重ねてきたものを、ちゃんと見てもらえたんだ」
と思えます。
「事務しかしてこなかった人」でも、
仕事ぶりを評価してもらえる。
責任のある仕事を任せてもらえる。
正社員として迎えてもらえる。
これは、私自身が経験したことです。
「資格がない」と「能力がない」は、同じではない
ここは、転職を考えるときに覚えておきたいことです。
資格がない。
↓
だから能力がない。
私は以前、そんなふうに考えていました。
でも、
資格がないことと、仕事ができないことは全く別です。
資格は、
「この知識や技能を学んだことを証明するもの」
の一つです。
一方で、
正確に仕事をする。
期限を守る。
周囲と調整する。
人の困りごとに気づく。
段取りを考える。
責任を持って仕事をする。
こうした能力は、
資格証明書に書いてあるわけではありません。
でも、実際の仕事ではとても重要です。
「スキルがない」のではなく、「言語化できていない」のかもしれない
最近、私は、
「事務職の人は、自分のスキルを低く見積もりやすいのではないか」
と思うことがあります。
毎日やっているから。
当たり前だから。
誰でもできると思っているから。
会社の中では評価されても、
転職市場でどう説明したらいいのか分からないから。
だから、
「スキルがありません」
と言ってしまう。
でも、本当は、
スキルがないのではなく、スキルを言葉にできていないだけ
なのかもしれません。
私も、まだ言語化の途中
もちろん、私自身も完璧に言語化できているわけではありません。
今でも、
「私って何ができるんだろう?」
と思うことがあります。
でも、
「事務しかしてこなかった」
という言葉は、少し変わりました。
今なら、
「事務を通して、正確な処理、期限管理、段取り、社員サポート、調整、周囲への気配りを経験してきました」
と言えます。
同じ経験なのに、
見え方が全然違います。
キャリアコンサルタントの勉強を始めたから気づけた
こういうことに気づけたのは、
キャリアについて勉強するようになったことも大きいです。
職業興味。
価値観。
キャリアアンカー。
これまでの経験。
自分の強み。
自分が苦手な環境。
一つずつ振り返っていくと、
「あれ?」
と思うことが増えてきました。
「私、意外と人を支えることが好きだったんだ」
「正確な作業は苦じゃなかったんだ」
「でも、細かいルールに縛られすぎるのは嫌なんだ」
「人は好きだけど、ずっと人と一緒にいるのは疲れるんだ」
「自分で工夫できる仕事が好きなんだ」
そんなふうに、
自分の取扱説明書
が少しずつできてきました。
事務経験は、「次のキャリア」の土台になる
今は、
「事務から人事へ」
「事務から採用へ」
「事務からキャリア支援へ」
「事務経験を活かして別の仕事へ」
という可能性も考えています。
まだ、どこへ行くかは決まっていません。
でも、
「事務しかしてこなかったから、何もできない」
とは、もう思いません。
これまでの経験は、
次の仕事を始めるときの土台になる。
そう考えられるようになりました。
もし、今のあなたが「事務しかしてこなかった」と思っているなら
一度、
「私は何の仕事をしてきたんだろう?」
ではなく、
「私は、どんなことを任されてきたんだろう?」
と考えてみてください。
そして、
- どんな仕事を任された?
- 何人くらいをサポートした?
- どれくらいの件数を処理した?
- 期限がある仕事は?
- お金を扱った?
- ミスが許されない仕事は?
- 人から相談されたことは?
- 「あなたに任せたい」と言われたことは?
- 周囲から褒められたことは?
- 自分では苦労せずにできたことは?
こうやって掘り下げてみる。
すると、
「何もない」
と思っていたところから、
意外なものが見つかるかもしれません。
「事務しかしてこなかった」からこそ、持っているもの
私は36歳になって、
ようやく少し分かってきました。
私のこれまでの仕事は、
「ただ事務をしていた」
だけではありませんでした。
会社がきちんと回るように、
数字を確認して。
書類を整えて。
期限を守って。
人の申請を支えて。
困っている人に対応して。
周囲を見ながら動いて。
任された仕事に責任を持ってきた。
それは、
私が10年以上働いてきた証拠です。
資格証明書がなくても、
職務経歴書に書ける。
面接で話せる。
次の仕事につなげられる。
そして何より、
「私には何もない」と思っていた自分に、少しだけ自信を返してくれる。
それだけでも、
これまでの経験を振り返る意味はあったと思います。
「事務しかしてこなかった」
ではなく、
「事務として、これだけのことをしてきた」
へ。
言葉を変えるだけで、
過去の見え方も、
これからの見え方も、
少し変わるのかもしれません。
36歳。
まだ、これから。
