なぜ私は、何度誘われても東京に行かなかったのか。キャリア・アンカーで分かった「譲れないもの」

私は、

東京で働きたくありません。

東京に住みたくもありません。

これは、

「なんとなく田舎が好きだから」

という程度の話ではありません。

満員電車が嫌。

人が多すぎる街が嫌。

家賃が高くて狭い部屋に住むのが嫌。

仕事のために、自分の暮らしを大きく変えるのが嫌。

将来起こると言われている都心の大きな地震も怖い。

だから、

仕事を選ぶとき、

「東京かどうか」は私にとってかなり重要な条件です。

そして、

以前の私は、

「こんなことを言ったら、仕事を選べる立場じゃないのかな」

と思っていました。

でも、

キャリアコンサルタントの勉強を始めて、

「キャリア・アンカー」という考え方を知りました。

すると、

「ああ、だから私は、あれほど東京に行きたくなかったのか」

と、

少し納得できるようになったのです。

目次

キャリア・アンカーって何?

キャリア・アンカーを提唱したのは、

**エドガー・H・シャイン(Edgar H. Schein)**です。

シャインは組織心理学者として知られ、

人が組織の中でどのようにキャリアを形成していくのかを研究しました。

「キャリア・アンカー」という言葉の、

「アンカー」は、

船の錨(いかり)のこと。

船が流されないように、

海底に錨を下ろして、

その場所につなぎとめます。

シャインは、

人のキャリアにも、

「これはどうしても大切にしたい」

という、

自分をつなぎとめるものがあると考えました。

それが、

キャリア・アンカーです。

JILPTの資料では、キャリア・アンカーは「コンピテンシー、モチベーション、バリュー」からなる自己概念として説明され、シャインは8つのタイプに分類しています。

8つのキャリア・アンカー

シャインが示した8つのキャリア・アンカーは、

次のようなものです。

①専門・職種別コンピテンス

「この分野の専門家になりたい」

というタイプ。

専門性や技術を高めることに価値を感じます。

②全般管理コンピテンス

「組織の中で責任ある立場になりたい」

というタイプ。

人をまとめたり、

組織全体を動かしたりすることに魅力を感じます。

③自律・独立

「自分のやり方で仕事をしたい」

というタイプ。

細かく管理されることより、

自分で判断し、

自分のペースで働くことを重視します。

④保障・安定

「安定した環境で働きたい」

というタイプ。

雇用や収入、

組織への所属など、

安心できる基盤を大切にします。

⑤起業家的創造性

「新しいものを生み出したい」

というタイプ。

自分で事業を作ったり、

新しい仕組みを考えたりすることに魅力を感じます。

⑥奉仕・社会献身

「誰かの役に立ちたい」

「社会を良くしたい」

というタイプ。

人や社会への貢献を、

仕事の大きな意味として捉えます。

⑦純粋な挑戦

「難しいことに挑戦したい」

というタイプ。

簡単にできることより、

困難な課題を解決することに燃える人です。

⑧生活様式

そして、

私が特に「これだ」と思ったのが、

生活様式です。

これは、

仕事だけを人生の中心にするのではなく、

自分の生活、

家族、

仕事など、

人生全体のバランスを大切にする考え方です。

私は「生活様式」がかなり強い

これまで自分のことを振り返ってみて、

私は、

この「生活様式」がかなり強いのではないかと思っています。

私は、

仕事のためなら何でも我慢できるタイプではありません。

仕事は大切。

ちゃんと働きたい。

できれば人の役にも立ちたい。

でも、

そのために、

自分の暮らしを全部犠牲にするのは嫌。

だから、

東京への異動を断りました。

実は、何度もチャンスはあった

以前勤めていたインフラ系企業では、

何度か本社への異動を打診されました。

最初に声をかけてもらったのは、

私の仕事ぶりや能力を評価してもらったときでした。

総務課か経理課に来てほしい、

という話でした。

普通に考えたら、

かなりありがたい話です。

「あなたの仕事ぶりを評価しています」

「もっと活躍してほしい」

という意味だからです。

でも、

私は、

行きたくありませんでした。

「評価されたのに、なぜ行かないの?」

そう思いますよね。

私自身も、

少し思いました。

せっかく評価された。

本社に行けば、

もっと仕事の幅が広がるかもしれない。

キャリアアップになるかもしれない。

でも、

それでも、

東京に行くのは嫌でした。

そして、

最後に退職の意向を伝えたときにも、

もう一度、

本社で働くことを提案してもらいました。

「事業所の雰囲気や上司が嫌なら、本社で活躍してほしい」

という話でした。

普通なら、

「それなら、本社で頑張ってみようかな」

となる人もいると思います。

でも、

私は、

それでも断りました。

大好きな人が東京に住んでいても、東京には住みたくなかった

これも、

自分で考えていて面白いところです。

当時、

大好きだった元彼の家は、

東京にありました。

好きな人が住んでいる。

だったら、

東京に住むことを考えてもよさそうですよね。

でも、

私は嫌でした。

「好きな人」と、

「東京に住むこと」は、

別問題だったんです。

私は、

それくらい、

自分の暮らしにこだわりがあった。

仕事より、暮らしを優先した瞬間

あのときの私は、

「キャリアを捨てた」

ような気持ちになっていたのかもしれません。

本社に行けば、

もっと評価されたかもしれない。

もっと大きな仕事ができたかもしれない。

もっと年収が上がったかもしれない。

それでも、

私は行かなかった。

なぜなら、

私にとって、

「どこで、どんなふうに暮らすか」も、仕事と同じくらい大切だったから。

今なら、

そう説明できます。

「キャリアアップ=出世」ではなかった

以前は、

キャリアアップというと、

昇進。

大きな会社。

本社勤務。

責任ある仕事。

高い年収。

そういうものだと思っていました。

でも、

キャリア・アンカーを知ると、

人によって、

「良いキャリア」の意味は違うのだと分かります。

ある人にとっては、

管理職になること。

ある人にとっては、

専門家になること。

ある人にとっては、

独立すること。

ある人にとっては、

社会貢献。

そして、

ある人にとっては、

自分の生活を守りながら働くこと。

どれも、

その人にとっては大切なキャリアです。

私にとって「東京に行かない」は、逃げではなかった

当時の私は、

「せっかくのチャンスを逃しているのかな」

と思いました。

でも、

今なら、

少し違う言葉で説明できます。

私は、

自分のキャリア・アンカーを守った

のかもしれません。

自分でも気づかないうちに、

「仕事のために、暮らしを変えすぎない」

という錨を下ろしていた。

だから、

何度誘われても、

動かなかった。

アンカーは「可能性を狭めるもの」ではない

「譲れない条件が多いと、

仕事が見つからなくなるんじゃない?」

と思うかもしれません。

私も、

以前はそう思っていました。

でも、

逆かもしれません。

自分が何を大切にしているのか分からないまま転職すると、

条件の良さだけで会社を選んでしまう。

そして、

入社してから、

「なんか違う」

となる。

でも、

自分のアンカーが分かっていれば、

最初から、

「私はここは譲れない」

と判断できます。

私の場合、勤務地はかなり重要

私にとって、

勤務地は、

単なる条件ではありません。

生活様式に関わる価値観です。

だから、

求人を見るときにも、

「仕事内容は面白そうだけど東京勤務」

なら、

それだけで候補から外れる可能性があります。

逆に、

「勤務地は自分の希望に合っている」

ということは、

かなり大きなプラスです。

これは、

わがままではなく、

自分が長く働くために必要な条件

なのだと思っています。

そして、これは「一人暮らし」や「余暇」にもつながっている

私が大切にしたいのは、

勤務地だけではありません。

仕事が終わったあと、

自分の時間があること。

一人で過ごせること。

趣味を楽しめること。

健康のために運動できること。

静かに暮らせること。

仕事以外の自分も、

ちゃんと存在していること。

そういう暮らしを、

私は大切にしたい。

だから、

「どんな仕事をするか」

だけではなく、

「その仕事をしたあと、私はどんな生活を送れるのか」

まで考えたいと思っています。

キャリアを考えるとき、「何になりたい?」だけでは足りない

子どもの頃、

「将来何になりたい?」

と聞かれるのが苦手でした。

やりたい職業がなかったからです。

でも、

今なら、

少し違う質問をしてほしいと思います。

「どんな生活をしたい?」

「何を大切にしたい?」

「何だけは失いたくない?」

「どんな環境なら、長く働けそう?」

こういう質問なら、

答えられたかもしれません。

私は、

職業名より先に、

暮らしのイメージがあった人間だったのかもしれません。

キャリア・アンカーを知ると、「なぜ?」が分かる

なぜ東京に行きたくないのか。

なぜ自分の時間が欲しいのか。

なぜ細かく管理されるのが嫌なのか。

なぜ自分で工夫できる仕事が好きなのか。

なぜ安定も欲しいのか。

なぜ人の役に立つ仕事にも惹かれるのか。

一つ一つを、

「性格だから」

「わがままだから」

で終わらせるのではなく、

「私は何を大切にしているんだろう?」

と考えてみる。

すると、

自分の選択に、

少しずつ理由が見えてきます。

キャリアは「何を手に入れるか」だけじゃない

以前の私は、

キャリアアップとは、

何かを手に入れることだと思っていました。

資格。

役職。

年収。

肩書き。

経験。

でも、

今は、

「何を手放さないか」

もキャリアなのではないかと思っています。

私の場合、

手放したくなかったのは、

自分らしい暮らしでした。

東京に行かない。

人が多すぎる場所に住まない。

仕事だけの生活にしない。

一人の時間を持つ。

好きな場所で暮らす。

そして、

できれば、

人の役に立つ。

その全部を、

できるだけ諦めない働き方を探したい。

36歳の今、ようやく分かってきた

私は、

「やりたい仕事が分からない」

ことで、

ずっと悩んできました。

でも、

「何をしたいか」だけではなく、

「何を大切にしたいか」

を考えてみると、

意外と答えがありました。

私は、

東京に行きたくなかった。

それは、

ただの好き嫌いではなかった。

自分の人生で、

「暮らしを大切にしたい」

という、

かなり根っこの価値観があったから。

キャリア・アンカーという考え方を知って、

そのことに、

ようやく名前をつけられた気がします。

これから転職するときも、

「採用されるか」

だけではなく、

「この仕事は、私のアンカーを守れるか」

を考えていきたい。

仕事に自分を合わせるだけではなく、

自分の人生に合う仕事を探す。

そのくらい、

自分のキャリアを自分で考えてもいいのだと思います。

36歳。

まだ答えは出ていません。

でも、

少なくとも、

「私は何を大切にしたい人なのか」

は、

少しずつ分かってきました。

まだ、これから。

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